2024年4月20日土曜日

吊庇

吊庇の鉄骨

倉庫などによくみられる吊庇のモデリング方法について練習してみましょう。ポイントは構造フレームの参照をレベルではなく参照面や屋根の面に設定することです。


勾配に正対するビューを作成する

まずは屋根を作成します。次のように外壁面から出幅5mで幅約12mぐらいの屋根を作成し、勾配を1:24程度に設定します。

左:平面 右:断面

屋根面に平行な断面図を作成します。断面図1を開き、垂直に断面図2を作成します。
断面図を垂直に作成

作成した断面を選択し、回転コマンドで中心を断面線と屋根の上面の交点に移動して、屋根勾配に平行になるように断面2を回転します。

回転の中心を屋根上面と断面線の交点に移動して回転

ビューの位置や奥行きを調整します。

断面ビューの奥行や位置を調整

作成した断面2ビューを開き、詳細レベルを標準以上に設定します。

屋根面に正対したビュー

構造フレームの配置

大梁小梁の構造フレームを配置します。

  1. 構造タブ>構造パネル>梁 を選択すると、作業面を選択するダイアログボックスが表示される。
  2. "平面を選択"を選択してOKし、屋根面を選択
    作業面として屋根面を選択

  3. インスタンスプロパティで"z位置合わせ"を"下"にする

  4. 構造フレームを描画します。オプションバーの"3Dスナップ"をチェックしておくとやりやすいでしょう。また寸法を配置すると位置の詳細な設定が可能です。
    構造フレームを配置する
  5. 3Dビューを開いて状態を確認

ブレースを配置する

  1. 挿入タブ>ライブラリからロードパネル>Autodeskファミリをロード
  2. 構造フレーム>鉄鋼>丸鋼を選択してロードボタンを選択
  3. タイプカタログで適切なタイプを選択してOK
  4. 屋根面に正対した断面ビューを開く
  5. 構造タブ>構造パネル>梁
  6. タイプでロードした丸鋼を選択
  7. オプションバーで用途を水平ブレース
  8. インスタンスパラメータで"z位置合わせ"を基準点、Zオフセット値を配置済みの構造フレーム成の半分程度に設定

  9. 3Dスナップを効かせながら、図のようにブレースを配置する

梁の参照を変更

ブレースを配置することにより、大梁の端部のカットバックの参照が変更になって隙間が空いてしまいました。

大梁小梁の参照を変更して結合状態を修正します。
  1. 大梁or小梁の構造フレームを選択

  2. 修正|構造フレームタブ>接合ツールパネル>参照を変更
  3. 相手の構造フレームのフランジ端部をマウスオーバーし、TABを何度か押して、フランジのエッジがハイライトされたらクリック

  4. 結合状態が修正されます。

  5. 同じ要領ですべての構造フレームの端部を修正します。

吊材の作成

  1. 挿入タブ>ライブラリからロードパネル>Autodeskファミリをロード
  2. 構造フレーム>鉄鋼>丸型鋼管を選択してロードボタンを選択
  3. タイプカタログで適切なタイプを選択してOK
  4. 屋根の断面ビューを開く
  5. 吊材を配置したい位置に参照面を作成して、名前を付ける(例:吊材)

  6. 断面2(屋根勾配に正対した断面ビュー)を開く
  7. 構造タブ>構造パネル>梁
  8. タイプでロードした丸型鋼管を選択
  9. z位置合わせを下、zオフセット値を0とする
  10. オプションバーで配置面を"参照面:吊材"とし、3Dスナップを外す
  11. 真ん中の大梁上に短めに丸形鋼管を配置

  12. 3Dビューを開き、丸形鋼管を選択


  13. 修正|構造フレームタブ>修正パネル>単一要素をトリム/延長
  14. 屋根の構造フレームのフランジ上面を境界に指定して下端を延長
  15. 同様に上端を柱面まで延長
  16. 他の大梁にコピー

構造フレームは参照面を指定することで勾配をコントロールしやすくなります。参照は
  • レベル
  • 名前の付いた参照面
  • 要素の面
を選択することができます。また、それぞれの参照に正対した作業用のビューを準備することも作業を容易にするポイントです。

2024年4月13日土曜日

構造フレームがトリムされる位置は?

構造フレームの端部

構造フレームの端部が他の構造フレームや構造柱と結合すると、接合部がカットバックされます。


この距離はインスタンスパラメータ"始端の接合部カットバック"および"終端の接合部カットバック"で設定できます。


このカットバック距離の基準となる位置は、一般的には境界ボックス(ジオメトリの最外形ボックス)ですが、任意の参照面に変更することもできます。

  1. ビューの詳細レベルを標準または詳細にする
  2. 構造フレームを選択し、修正|構造フレームタブ>接合ツール>参照を変更
    このとき表示される青色の破線が境界ボックスです。

  3. 柱のウエブの面をクリックすると、

  4. 接合部カットバックの基準が柱のウエブ面に変更されます。

境界ボックスを規定する要素

境界ボックスは要素を囲むボックスですが、その範囲には
  • シンボル線分
  • 参照線(弱参照と強参照)
が含まれるので注意が必要です。例えば鉄骨柱の周囲に耐火被覆の線をシンボル線分で作成すると
シンボル線分で耐火被覆

境界ボックスの範囲にはこのシンボル線分まで含まれます。
シンボル線分も境界ボックスに含まれる
接続する構造フレームの端部は境界ボックスでトリムされることになりますので、シンボル線分を構造柱や構造フレームに設定するときは注意が必要です。

参照変更の使用条件

構造フレームが他の構造要素と接合するときは、いったんは境界ボックスでトリムされますが、参照の変更を使うことでカットバックの基準位置を変更することができます。
参照を変更
参照変更ツールが使用できない場合は
  • ビューの詳細レベルが簡略ではないこと
  • 要素が接合されていること
  • 要素はコンクリートではないこと
  • 要素が直線であること
を確認してください。

2024年4月6日土曜日

下がり天井~仕上2枚

岩綿吸音板の折り上げ天井

下がり天井のモデリングについては、ずいぶん前のトピックで触れたのですが、GB9.5+岩綿吸音板6のような2つのレイヤの壁と天井の作り方について考えてみます。

天井と壁の結合について考察

それぞれのレイヤ構成は次の図の通りです。岩綿吸音板を仕上2[5]、GB9.5を仕上1[4]としています。

天井

天井のレイヤ

壁のレイヤ
垂れ壁と天井を前回の手法で結合すると次のようになってしまい、GBと岩綿吸音板の包絡がうまくいきません。
仕上1、2のレイヤの結合がいまひとつ

レイヤのロックを解除する

そこで、壁の仕上1,2のレイヤ下部のロックを解除します。
  1. 壁を選択してタイプ編集
  2. 構成の編集ボタンを押してアセンブリを編集ダイアログボックスを表示
  3. プレビューボタンをクリックしてプレビューを表示
  4. ビュー(V)を[断面図:タイプ属性を修正]を選択し、壁の下部を拡大
  5. 修正をクリックし、仕上2のレイヤ下部をクリック、表示された鍵マークをクリックしてロックを解除
  6. 同様に仕上1のレイヤのロックも解除
    隣り合う二つのレイヤのロックを解除

  7. OKを2回押す
断面図で垂れ壁を選択すると、下側に▼が二つ表示されます。
垂れ壁下側に▼(ハンドル)が表示される

仕上側のハンドルを天井の岩綿吸音板レイヤの上(GBレイヤの下)に合わせる、または垂れ壁の"基準高さからのオフセット"の値を-12.5(GBの厚さ)に設定するときれいに結合します。

仕上下地レイヤが3枚になるとこの方法も使えなくなってしまいますが、大多数の天井では通用するはずです。


レイヤのロック解除について

レイヤのロックを解除するとあたかもそれぞれのレイヤの上下の高さを自由に設定できて便利そうですが、実際には各レイヤを自由に高さ変更できるわけではありません。レイヤのロック解除には制限があり

ロック解除するレイヤは隣り合っていなければならない

という大原則があります。結論から言うと異なる高さは1種類のみ設定できる、ということです。

例えば、LGSの両面にGB12.5を張った壁の、外側と内側のGBの高さをそれぞれ異なる値に設定しようとしてもできません。

アセンブリ編集ダイアログを開き、内外のGBのレイヤ上部をロック解除すると

両側のレイヤのロックを解除しても…

OKを押しても次のような警告が表示されます。

警告が表示される
つまるところ、壁の各レイヤに設定できる高さは2種類だけ、ということです。

2024年3月31日日曜日

複数の条件付き書式

条件付き書式の基本

集計表の条件付き書式は、ある条件に合致したセルを色付けする機能です。例えば、次のような構造フレームの集計表があって、

構造フレームの集計表を作成

始端レベルオフセットが0でない場合に、A列に色を付けるとすると、書式でA列の条件付き書式をクリックし

書式>条件付き書式をクリック

条件と色を設定します。

設定した条件に従って、A列(ファミリとタイプ)の列に書式が設定されます。
セルが書式設定(着色)される

複数の条件を設定する

条件付き書式ダイアログボックスの「使用する条件」には複数の条件を設定することができます。

条件グループのフィールドドロップダウンリストから始端レベルオフセットではないフィールド、例えば長さを選択し、テストにより大きいを選択すると2行目の条件を設定することができます。

複数の条件を設定

この条件はAND条件で、上記の設定だと、「始端レベルオフセットが0ではなく、長さが10000を超える要素」を書式設定します。


OR条件は?

条件付き書式の複数条件はAND(且つ)しか提供されていないので、ORの場合は計算フィールドを追加して判別式を追加します。たとえば、

  1. 始端レベル オフセットが0ではない
  2. 終端レベル オフセットが0ではない
  3. 長さが6000以上

の三つの条件のいずれか一つを満たすセルを色付けするとすれば、合致したときにTRUE(はい)を返すには

  1. not(始端レベル オフセット=0)
  2. not(終端レベル オフセット=0)
  3. not(長さ<6000)

の三つの式をorで結ぶ計算式フィールドを追加します。式には以上、以下の記号はありませんので、<>とnotを組み合わせて、「以上」を表現します。三つをORでつなぐと

or(not(始端レベル オフセット = 0 mm), or(not(終端レベル オフセット = 0 mm), not(長さ < 6000 mm)))

3つの条件をORで判定
そしてこのフィールドを使って、条件付き書式を設定します。
条件付き書式
これで、フィールドが書式設定されます。
OR条件を使って書式設定

2024年3月23日土曜日

部屋の面積・容積の認識

部屋の面積はレベルで決まる?

部屋を配置すると周長・面積。容積が計算されます。これらの値はどのように計算されるのか考察してみましょう。

レベルのプロパティに注目

部屋の面積はレベルのインスタンスプロパティ「算定高さ」で部屋の領域を決定します。

レベルのインスタンスプロパティ「算定高さ」

なぜ算定高さというパラメータがあるのかは、次のような傾いた壁がある部屋を考えてみるとわかりやすいです。壁が傾いていると、高さによって部屋の周長や面積が異なります。
傾いた壁を持つ部屋

容積の計算を面積と容積、部屋面積の計算を壁の仕上面に設定します。


レベル1の算定高さの値を500に設定した場合は、部屋の周長・面積・容積はレベル1+500の位置で計測されます。

部屋を選択したときに表示される破線の位置が算定高さを示している

レベル1の算定高さを1200に設定した場合は、部屋の周長・面積・容積はレベル1+1200の位置で計測されます。
レベルの算定高さの値に応じて部屋の認識範囲が変わる

部屋が置けない!?

この算定高さは初期値では0に設定されていることが多いので注意が必要です。たとえば、算定高さが0で、レベル+100の位置に床がある場合、
レベル1算定高さ=0,床FL+100
平面図で部屋を配置しようとしても、配置することができません。
平面図で部屋が配置できない?
レベル1の算定高さが0で床がレベル1+100のため、算定高さが床の中に埋まってしまっている状態となり、境界として認識できる壁が見つからない状態になっています。
レベルの算定高さプロパティの値は1200程度に設定しておくのがよいでしょう。